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シンエヴァの感想

ぼくはエヴァンゲリオンとの付き合いがまったく長くないし、なんならきちんと映像を見たのはここ2~3年のことだったりする
元は漫画版を読んでいたが、そこまでのめり込むこともなく、見た映像媒体もなぜか録画されてたQ公開時の金ローの破のみという微妙さだった
エヴァにはまり出したのはEVA-EXTRAというアプリで新劇場版三部作が公開されてからだ
エヴァQの評判が良くないことは薄々知っていて、それもあってこれまでQを見ていなかった
そこでぼくはQの評判が良くないことに納得がいったが、同時にすごいものを見たという感覚を味わった
この衝撃はQを見た人には伝わるだろう
それ以来、ぼくはテレビ版や旧劇場版を見返してシンエヴァの公開を待つ典型的なエヴァファンになった

 

エヴァンゲリオンを楽しむ本筋は二分されると考えている
一つはその世界観
使徒インパクトなど専門用語が無数に存在しており、エヴァはとくにその専門用語への説明が少ないため視聴者側で考える範囲が広い
二つ目はキャラクターの心理描写
これの最たる例がテレビアニメ版25、26話だと考えている
エヴァは初号機の暴走など一つ目の見所が取り上げられることが多いが、メインはキャラクターのコミュニケーションだと考えられる
ではシンエヴァがどうだったのかというと、二つの魅力がどちらも強く表に出されていた

 

まず冒頭のパリのシーン
とはいえここはかなり前に公開されていたため今さら語ることはないが、既に公開されていたものと同じものが上映されたことに少し安心した
ここではコア化されている土地を復元可能なことが示され、またエヴァモドキのネーメジスシリーズを作っているのが冬月であるということが明かされた
またストーリーがマリから始まったという点は本作においてとても重要だろう

 

次に第三村のシーン
ここでの心理描写、コミュニケーションの描写がシンエヴァで最も好きな部分だった
そもそもシンジが傷心状態になった直接の原因として、自らの行動によりカヲルを失ったことにある
カヲルはシンジにとってはDSSチョーカーを肩代わりするという形で最も分かりやすく好意を伝えてくれた相手であり、その傷は死んだと思われたトウジやケンスケの生存では補えないほどであった
このシンジを立ち直らせたのが「好きだ」という言葉で好意を直接伝えた黒レイだったのがとても良い
これまでのエヴァからシンジが他人の行為に対して鈍感であること、またレイ、アスカ、ミサトはシンジに対して好意を抱いているが伝え方が不器用であることが描写されていた
テレビ版や旧劇場版ではシンジは対話により「ここにいてもいい」という確信を得て人類補完計画を砕くが、シンエヴァでは冒頭ですでにシンジをこの領域に押し上げたのだ
加えて黒レイがこのように直接好きだと伝えることができたのは、Qからのシンジ、アスカ、マリの言葉でアイデンティティーを確立し、ヒカリを筆頭に村のみんなが黒レイを受け入れたことにある
多くの人間のコミュニケーションの結果として出力された黒レイの言葉がシンジを立ち直らせたというのがとても綺麗だと感じた
またこの後のシーンでアスカの「初期ロット(黒レイ)のおかげで立ち直ったのね」というような問いかけに対し、シンジが頷くのも良かった
これまでのシンジはアスカに対してまったく反応しておらず、ここで初めてコミュニケーションをとったと言える
ただ声も発さず頷くだけであったがアスカもそれ自体を非難することはなく受け入れており、EOEのラストを思い出させるようなやり取りだと感じた
その後劇中の役割を終えた黒レイはLCL化して死んでしまうが、シンジはカヲルのときのように折れることなく前に進んでいた
これはカヲルのときは綾波を失ったと知った直後だったのもあり、突然の別れだったからであろう
黒レイの場合はそれまでにトウジとケンスケにより精神面がかなり安定しており、別れを受け入れて立ち直るだけのエネルギーがあったのだと思う
それどころかヴィレに戻り、笑いながら拘束されるほどの胆力を見せた

 

その後シーンがミサトとリツコにうつる
ここでヴンダーが元はネルフのものであり、加持が手に入れたものであることが語られた
ヴンダーについてはQ以上の情報が得られないかもしれないと考えていたため、シンエヴァがしっかりとQに向き合ってる作品であることを確信した
余談だがぼくはスターウォーズシリーズもエヴァと同じような追い方をしていた
EP7を映画館で見てから過去作を見返してEP8、EP9と見てきた
EP8は世間の評価はあまり良くないが個人的にはそこまで嫌いではなく、エヴァQと似たような立ち位置の作品だ
しかしながら、それに続くEP9はシンエヴァとは真逆で、EP8までの積み重ねをほとんど放棄し、単体で完結させるかのような作品であった
この出来事は自分にかなり大きい傷を残し、シンエヴァも同じ道筋を辿るのではないかという不安に駆られたまま当日を迎えた
結果は先述の通りであり、Qで評価の低かったミサトやリツコを大きく掘り下げる、とても丁寧な続編だと感じた

 

収容コンテナでのシンジとアスカの会話も深いやり取りだった
恐らく、あのシーンにおけるアスカの問いかけに対するシンジの回答は100%的を射たものではない
しかし、あの場面ではシンジがきっぱりと答えたことに大きな意味があったのだろう
アスカはシンジが好きだったことを正面から伝え、別の存在ではあれど旧劇場版までのアスカからの成長を感じた
あとはこの場面最後のマリの「再見」もよかった
アスカが完全に死地への出撃の構えをとっていたこともあり、チルドレン全員が命を賭して補完計画を止めるENDもあると考えていたが、マリがこう言ってくれたおかげで何らかの形で生きて帰ってくるだろうと思いながらラストバトルを見ていた

 

そしてラストバトル
めっちゃくちゃ面白かった
ゲンドウに関しては脳みそ拾い、量子テレポートなど語りたい部分が無限に出てくる
予告PVで初号機と第13号機の戦いはすでに公開されていたがその3DCGクオリティはほかに比べて低く、これは開発途中なためだろうと考えていた
しかしながら、その期待は裏切られ、本編でも他より低いクオリティの初号機対第13号機戦が繰り広げられた
その理由は「人の感覚では認識できない世界」だから
ジオラマのように雑に横滑りする街並みに内心爆笑していた
ロンギヌスとカシウスのぶつけ合いもシュールな画で、おそらくあの一連の流れは笑いを誘うためのものだと思う
このあたりはどことなく旧劇場版で実写を使ったのと同じ手つきを感じた
その後の流れでシンジとゲンドウが言葉を交わすのも良く、エヴァを終わらせるには必要な過程だという説得力があった
ゲンドウも利己的な親ではなく、一人の人間として掘り下げられていたように感じた

 

シンエヴァにおける心理描写はほとんどが旧劇場版までと同じ話をしていたと思う
しかし、それらは総じてテレビ版、旧劇場版よりも分かりやすくされていた
したがって、考察などの要素は世界観に一任し、心理描写を分かりやすくすることで、シンジとゲンドウの目的を視聴者が理解しやすく、単純に映画を楽しむノイズを減らした作りになっていたと感じる
その結果、シンエヴァは視聴を終えて第一に楽しかった、面白かったと言いたくなるような映画になっていた
BDが発売されれば、お酒を飲んで笑い声をあげながら見たい映画だ