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スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム

 1か月近いネタバレ回避期間を超えてようやく見れました『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』。この1本のためにトムホ、トビー、アンドリューの3スパイダーマン7作品とヴェノム、デッドプール4作品を加えた計11本の映画を見るなどかなり気合を入れました。それもこれもヴィランだけでなく歴代スパイダーマンも出るのではないかという淡い期待に賭けたものです。実際の所は……。以下ネタバレあり

 

 

 

悲しい話

 スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム、とっても悲しい話でした。僕は3人のスパイダーマンを見た中でもトムホスパイダーマンが一番好きです。それはシビルウォーでアイアンマンが訪ねて来たときの喜びようからスタークが死んだ時の悲しみ方まで歳相応な反応に好感を抱いたからです。トビー、アンドリューのスパイダーマンはノー・ウェイ・ホームが発表されてから見たのですが、思ったよりも暗い雰囲気が漂っていて驚きました。同時にトムホスパイダーマンにとってのベンおじさんがMCUではトニー・スタークなのだと”思い込んで”いました。

 

 実際、そういった思惑はあったと感じます。しかし前2作と比べた時に足りないのはスパイダーマンの失態です。MCUではスパイダーマンの失態で事態が悪い方向に転がったり、トニー・スタークの死に繋がったりという印象は受けません。むしろエンドゲームまではスパイダーマンアベンジャーズとしてトニー・スタークに認められるお話であり、「大いなる力には大いなる責任が伴う」を始めとするヒーローとしての苦悩と責任の話は少なかったです。今作はこれまでのスパイダーマンが複数作品かけてやってきた暗黒期を1作品にまとめた濃くて暗い話でした。それにしても辛い

 

 今作におけるピーターの失態とは何だったでしょうか。まず初めにこれは前作になりますがミステリオを信じきってしまったこと。しかしニック・フューリーにも責任の一端はあると思うので今作のしっぺ返しは理不尽に大きすぎます。次にストレンジも指摘していましたが早々に魔術を頼ったこと。後の展開にありましたが直接かけあえば交渉の余地のある相手でした。話は逸れますがスパイダーマンの正体が明らかになってもフラッシュが親友でいてくれたことはとても良かったです。ホーム・カミングでは単に嫌な奴でしたが仲間とは言えないけれど協力してくれる程よい関係に落ち着いたと思います。
 最後の失態としてこれが最も大きいと思いますが、マルチユニバースのヴィランを助けようとしたことです。ストレンジが元の世界に返そうとしたタイミングでヴィランらを返しておけば何も事は起こらなかったでしょう。ピーターがヴィランを助けようとして起きた事件は元の世界と運命を変えてしまうという「責任」を直視せずに行動してしまった結果だと思います。メイおばさんの信条に従った結果メイおばさんを失うという重たいしっぺ返しです。「大いなる力には大いなる責任が伴う」は大きな力を持ったのならばそれなりのことに力を使えという戒めだと思います。その点ではピーターの対応は正しかったですが事を甘く見すぎたのでしょう。

 

過去作スパイダーマン

 MCU世界からピーター・パーカーが失われたショックが大きすぎて悲しさばかり書きましたがそれは受けた感動の裏返しであり映画自体はとんでもなく面白かったです。ストーリーの深刻さに比べて画面が明るすぎないか?と思う点もありましたが個人の情緒に依存するので難しい話だと思います。ストーリー序盤は特に明るい面が目立って良かったです。もちろんスパイダーマン=ピーター・パーカーがバレて大変な部分はあったのですが「弁護士が来るまで口を開かないで!」やハッピーとメイおばさんの痴情のもつれなど笑える場面も多かったです。特にドクター・オットーが出てからのピーターらとのやり取りはとても微笑ましかった。僕らはオットーがアームに操られているだけで本当はいい人だと知っていますし、何ならスパイダーマンヴィランは一つ問題を抱えているだけで本来は良い人達なので協力関係になる展開は予想以上で嬉しかったです。

 

 ヴィランと協力して肉体を元に戻そうとする展開は面白かったです。ノーマンからスカウトされ、オットーがまさにトビー版スパイダーマンの時の表情に戻るところなどファンを喜ばせるためのシーンに感じました。ノーマンがグリーンゴブリンに乗っ取られていることにピーターが気づくシーンは緊張感もありとても格好良かったです。それまでもマックスが「元の身体に戻らなくていい」と語るなど不穏なシーンはありましたがやはり協力関係が崩れると悲しいです。そして予想だにしていなかったメイおばさんの死。思い返せばメイおばさんとMJを対面させるなど退場の準備は進んでいたように思います。トムホスパイダーマンのメイおばさんは比較的若く、表に出るシーンも多くあって人間としての魅力も強かったため死んだ時は本当に悲しかったです。

 

 場面は変わってMJとネッド。僕はストレンジファンとして正直ネッドが簡単にスリング・リングを使ったことに対して否定的ですが、旧作スパイダーマン登場のための演出と考えれば十分すぎました。懸命なネタバレ回避の結果、本当にトビーとアンドリューが出るのか知らない状態だったので最大限に驚くことができました。トムホピーター側との温度差が激しかったですが、蜘蛛の巣のくだりや対面した2人が同じ動作でけん制し合うことなど一種のお祭りのような機会として存分に見れたと思います。
 僕はトビーのピーターもかなり好きなので少し大人になりつつも優しい顔のピーターが見れて嬉しかったです。オットーを若い姿で出したように技術的にはトビーのピーターを若い姿で出すことも出来たはずですが、今作はあの大人の姿で出したことに意味があったのだと感じます。アンドリューのピーターがMJを救ったところは本当に胸が熱くなりました。アメイジングスパイダーマン2でグウェンが落ちていく中で僕は完全に救えると思っていたので救えなかった時の衝撃と悲しさは大きかったです。アンドリューのピーターはそれをずっと後悔しているような言動をしていたので、絶対あるだろうなと思った展開ではあったのですが感極まってしまいました。その点トビーはノーマンを殺させなかったという再演でしょう。あのシーン、トムホピーターがノーマンを赦すならメイおばさんの死に対して甘すぎるし殺すのはもってのほかという難しさがあったと思います。グリーンゴブリンに対する殺意には自分自身への怒りも混ざっていたのでしょうか。

 

ラストシーン

 最後のピーターの記憶を消させるという決断、ストレンジは強大な力を持つからかいつも辛い役回りです。ヴィランの身体を元に戻すというピーターの計画がうまくいっていたことに感心し、それを見届けることを選ぶなどピーターが子供だとしても無下に扱わず友人として接するところが好きです。そしてピーターの記憶を消すという辛い判断をしっかり下せるところもいいです。マルチバースに対して『ロキ』の影響の示唆もなかったですが、これはシンプルに今回の騒動には関係なかったということですかね?ラストシーン、メイおばさんのお墓の前でピーターがハッピーに対して「死んでも思いは継承される」というようなことを語っていましたが全員に忘れられたピーターの思いは誰にも受け継がれないんですよね……。MJに自分が元の知り合いであると告げなかったのもこれ以上スパイダーマンとしての活動に巻き込まないための覚悟でしょうし、このあたりの判断や切り捨てが大人になった、スパイダーマンになったという感じがします。

 

終わりに

 『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』、予想よりもお祭り騒ぎの作品で悲しい終わり方の作品でした。自分は「後悔しなくて済むように最悪を考えていた」のでユニバースからピーター・パーカーが消えることまで覚悟していました。結果としてはほぼそれに近い終わり方でした。この先のスパイダーマンの扱いはどうなるのでしょうか。もう一度アベンジャーズに誘われて、という流れを二度することはないと思うのでスパイダーマンの個人的な活動がメインでその中で他のヒーローとすれ違うような形になるでしょうか。となるとMJとネッドの出番はほとんどなくなるでしょうか。新ヒロインとしてグウェンが出るのでしょうか。色々な可能性を考えてしまいます。とっても面白かったが決して望んだ終わり方ではなかったというのが今の正直な感想です。

 

 最後に取り上げる程でもない疑問点をいくつか挙げて終わります。
・ヴェノム
 マルチバース間の移動は「スパイダーマン=ピーター・パーカーと知っている者」と言う条件付きでしたがエディ・ブロックもしくはヴェノムはこれを知っていたのでしょうか。ヴェノム2のラストでピーターを見ながら「あいつだ」という風なことを言っていたのでヴェノムのユニバースにもスパイダーマンがいる可能性はあるかもしれません。
サンドマン
 サンドマン、トビー版でも最後はいい人でしたし今作でも元の世界に帰りたがっていたのでなぜ反旗を翻したのか謎でした。まあ元々ヴェノムにそそのかされて敵対しましたし流されやすい性格なのでしょうか。