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【感想】モービウス

まだ公開1か月も経ってないのに、そんなに田舎でもない近場で1上映/日で焦った。MCUじゃないとは言えMARVELの映画だぞ!!?

 

公開日から少し遅れましたが『モービウス』を見てきました。正直、SSU (Sony’s Spider-Man Universe. スパイダーマン:NWH以降、スパイダーマン周りのユニバースは2つに分裂するらしい)にそこまで興味がなかったので、最近まで劇場で見るか迷っていましたが、せっかくヴェノム2作見たので本作も見に行きました。感想としては、そこまで高いハードルではなかったのですが、個人的にはヴェノムよりも単作として好きでした。特に演出が良く、ヴィランではなくヒーローとしての活躍が見たいと思いました。

 

以下ネタバレあり。

 

 

 

演出

モービウスですが、事前情報は「スパイダーマンヴィランである」ということ以外ほとんど持っていませんでした。今後のスパイダーマン、およびSSUがどう進むのか分からないため、現在は感情の置き場がない状況です。

 

一方で、単作として見るとストレートに面白い映画だったと思います。人体実験で異形になった主人公、制御できずに人を殺めてしまう、同じルーツを持つ敵、というストーリーは王道で、あまり深く考えずに楽しんで見られました。主人公が医者なので「人の命を救う」=善、「人を殺める」=悪と勧善懲悪的に分かりやすくて良かったです。

 

加えて、蝙蝠人間ならではの高速移動や滑空、エコロケーションの能力に煙が舞うような演出がされており、あまり見たことのない表現で新鮮味がありました。特に自らの持つ滑空能力に気づくシーンは(多少間延びっぽさはあったものの)、気流を読んで滑空している様子が台詞ではなく映像だけで示されており、説得力と面白さがありました。ラストシーンでヒロインを探す時のエコロケーションは、あまり思うことは少ないのですが映画館で見て良かったと感じました。

 

能力への理解

偶然異能を手に入れた主人公が自分の能力の限界を試す描写が好きです。分かりやすい所では『コードギアス』でギアスを手に入れたルルーシュが、学生を使って有効距離や時間、命令を確認するシーンです。『モービウス』もそのような描写があり、異能を突然手に入れた主人公として良かったと思います。

 

特にボールを使ってエコロケーションの練習をするシーンは、先述した煙のような演出も含めて個人的好きな描写の一つです。赤いボールを掴んだ後も煙が揺らいでいる様子がオシャレかつ、モービウスが視覚ではなく感覚で位置を把握している様子が描かれていると思います。

 

最後のバトルについても、マイローに対する勝因はモービウスが自分の能力を把握していたことにあると思います。マイローは終始、高速移動能力のみを使用しており、膂力に頼った戦い方でした。一方で、モービウスは滑空能力やぶら下がり能力を使いこなしていました。ビルから落ちた時にマイローのみが地面に叩きつけられていたのはそういう描写だと思います。そして決着を付けたエコロケーション能力によるコウモリの使役です。マイローにもコウモリのDNAが入っているはずですが、吸血コウモリを自ら捕獲し、ペットのように飼育していたモービウスだから成し得たことだと思います。同じ能力を持った2人の差別点として、人工血液ではない人間の血を吸ったマウローと、自分の能力への理解をやめなかったモービウスという構造があり、それをヒロインの血で埋めるというストーリーは、王道ながら論理が通っているように感じて面白かったです。

 

論理が通っていると書きましたが、ほとんどは演出から深読みした好意的な解釈であり、本作は謎の描写も多かったです。まず冒頭、時系列はおそらく研究所のコウモリを捕獲した場面だと思うのですが、あの時点でただの人間だったモービウスは何故コウモリに襲われなかったのでしょうか。最初は蝙蝠人間になった後の話だと思いましたが、杖を付いていたことから真人間であり、かなり都合の良い描写に見えてしまいます。

 

また研究室のコウモリはパスワードで管理するほどの秘匿事項だと思います。それなのに当然のように、コウモリが解放された状態で他の医者が入室してくるシーンは笑いました。コウモリには一瞥もしていなかったため、ヒロインよりもモービウスと親しい医者だったのでしょうか。その後、マイローも当然のように入室しており、病院内のセキュリティの緩さというか、研究室を一背景としか扱っていないのが気になりました。

 

雑な描写と比較して、偽札印刷機を医療器具に改造する描写は、過去編のマイローの治療器具を修理するシーンで説得力を持たせていたのも謎でした。そこに説得力を持たせるならもっと気にするべき描写があっただろうにと思います。しかしながら、モービウスのギフテッド設定が、能力に対する理解の仕方やここの改造描写のように十分に活かされていたのは、本作の面白い部分でした。

 

総評

ストーリーは王道な上に映像表現が奇抜で面白いので見ると面白い映画だと思いました。個人的にはヴェノム2作よりも好きでした。一方で、キャラクターへの愛着はあまりないので、SSUに対する期待はそれほど上がらなかったのが正直な感想です。最後のバルチャーも、結構どうでもよさを感じました。やっぱりスパイダーマンが出ないと気持ちは盛り上がらないです。それにしてもバルチャーとモービウスの出会いのシーンはもう少し恰好良くならなかったでしょうか。バルチャーがこの世界に来てわざわざ翼を再生産したと思うとおかしいです。

 

SSUに対する期待はあまりないですが、モービウスはとても面白かったのでオススメしたいです。ヴィランの側面はあまりなく、人命を救うことを最優先するような医者ヒーローです。SSUが今後MCU並みに大きくなった時にも、今見ておくと気持ち良くなれると思います。

 

これは非常に個人的な話ですが、ちょうど最近『月姫』をプレイしていたので、吸血鬼が主体ということもあってリンクする部分をたくさん感じました。特に、ロアに取り憑かれた志貴を想起させ、看護師が殺された場面もモービウスを疑うより先に、志貴→死徒ノエルのミスリードを思い出しました。

 

また、食人か死かという葛藤では、『東京喰種』を思い出しました。ヒロインを食べる(吸血する)ことで本来の力を発揮する展開も似たものがあります。喰種は最近ムーンナイトとコラボしていたのですが、どう考えてもモービウスとコラボするべきだったでしょう。モービウス側は手の骨を説明しながら順番に折っていくという金木クンさながらの拷問をしており、これは東京喰種サイドに向けたアプローチと言っても過言ではないです。

 

戯言はさておき、モービウスのダークヒーローとしての王道の良さは伝えたいです。本当に高速移動表現がかっこいいです。エコロケーションも映画館で見た方が迫力あると思います。是非。