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【感想】デカルト『方法序説』

 僕は少しだけ哲学に興味があり、大学生の時に哲学の講義を受けました。その講義は民主主義や記号論に関するものでしたが、自分が知りたいのは意識や心の哲学だったため期待外れなものでした。僕は体系的に学ぶ哲学を面白くないものとして、それ以降勉強しようとしませんでした。

 

 最近、在宅での作業が増えて作業用に流す動画を探していると、哲学に関する動画が目に留まりました。それを見て初めて、自分の受けた講義が受けたかったものと違うテーマだったと気付きました。一応、僕の知りたい内容は形而上学に当たるらしいです。動画だけ見て分かった気になるのも嫌だったので、とりあえず哲学書を一冊通して読んでみようと思いました。

 

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 哲学は主にそれまでの通説を批判することで議論を進めます。つまり、哲学の勉強は歴史の勉強になります。西洋哲学の祖と言われるソクラテスは紀元前400年頃に活躍した哲学者です。それにもかかわらず、哲学の入門としてデカルトが挙げられることが多いです。デカルトが活躍したのは1600年頃で、ソクラテスから2000年の空白があります。この2000年を無視してデカルトから読み始めて良いのか悩みましたが、読むとデカルトが最初に勧められる意味が分かりました。

 

 デカルトの名言に「我思う故に我あり」があります。この言葉の重要な部分は言葉の意味そのものではなく、自明でないものを削除した結果残った考え方という点です。つまり、デカルトは過去の哲学者の批判ではなく、土台を自ら作り議論を始めます。とすれば、最初の一冊としてデカルトが勧められるのも納得です。実際、過去の哲学の流れを全く知らない僕でも、デカルトの考え方はすんなりと理解できました。そもそも『方法序説』は哲学者のための哲学書ではなく、当時の一般民衆のために書かれた本のようです。

 また、『方法序説』は哲学書としての側面と同時に、自然科学書としての側面が大きいです。例えば本書の中だけでも、人体解剖により得られた心臓が動く仕組みが説明されています。残念ながらデカルトによる推察は的外れですが、当時の科学の最先端を知ることができ、わずか400年前ながら歴史と科学の進歩を感じます。僕は哲学が科学の近縁であるという考え方がとても好きです。『方法序説』は自然科学書に近いという点で、とても読みやすい本だと感じました。

 

 哲学書を読んで何か実生活に活かせることがあるかと言えば、僕にはハイレベルすぎて答えることが難しいです。もし興味がある人で、理系科目が好きならこの本を最初に勧めます。もっと哲学っぽいものを読みたいならこの本はマッチしていないように感じました。

 最初に書いたように、哲学はそれまでの通説を批判することで進んできた学問です。僕にとってデカルト方法序説は最初の考え方の一つであり、それらを批判する次の考え方を知るまでがワンセットだと考えています。この後の歴史の流れはまだ調べていませんが、個人的にカントの『純粋理性批判』は読みたいと考えています。最終的にはジョン・サールといった現代哲学に辿り着き、科学的な方面からは量子脳理論に触れたいです。